加藤 元
一般財団法人J-HANBS 理事長
ダクタリ動物病院会代表(全国21病院)
コロラド州立獣医科大学、千葉科学大学、北京農業総合大学 客員教授、コロラド州立獣医科大学アンバサダー(日本)、公益社団法人 日本動物病院福祉協会元会長、常任学術アドバイザー、IAHAIO元副会長(95年〜01年)
ハッピーな脳とアンハッピーな脳
ほめてしつける陽性強化法、自発的しつけ法
人、犬、猫の脳の発達について、脳の生理学的に共通していることがあります。それは、仮に脳に神経情報刺激が少しもなかった場合、脳の機能は全く成長しないということです。
アンハッピーな脳とは、心のチャンネルを閉ざし、外部から脳へ入ってくる神経情報刺激をできるだけ受け取らないように働いてしまう脳です。その結果、ネガティブに抑制された分だけ脳の発達・発育は抑制されてしまうことになります。つまり、脳が神経情報刺激を十分に取り込むには、ハッピーな脳が必要になってくるということになります。
ハッピーな脳とは、心のチャンネルを開き、あらゆる神経情報刺激をポジティブに受け入れる脳ということです。いやいやではなく、脳が自ら喜んで刺激を取り込むということです。
これが、行動学でいうところの「陽性強化法」という、脳内でいつも起こっている生理学の現象なのです。これは、脳の「自己をほめるシステム(脳の生理機構が働き、自発的な行動強化につながる)」が働き、自らの脳に取り込ませている現象です。
このことが最も顕著に起こるプロセスが「社会化の感受性期」や
「脳の敏感期」と呼ばれる期間で、人では10 歳まで、犬や猫では4 か月
に至るまでが特に脳が効果的に取り込む期間であり、神経細胞の
ネットワークが育つ期間なのです。
人の場合、思考や論理をつかさどる前頭葉では、生後6 か月から
1年の間に、成人の脳の約2倍に当たるエネルギーを消費してシナプス
(神経細胞ネットワークの成長)を形成します。
この勢いは10 歳になるまで、特に効果的かつポジティブに行われます。