第二回 「ダンゴ虫」
小林 紀雄
東京都鳥獣保護員
日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ マスターインストラクター
ダンゴ虫というのは昆虫ではなく、生物の専門的に言うと節足動物です。
足が7対14本もあり、体が丸まり、手に取っただけでは足の数さえ数え難い生き物です。等脚目(ワラジ虫目オカダンゴ虫科)のオカダンゴ虫というのが正式の名称です。オカと特定しているから陸にいる。ハマダンゴ虫というのもいるし、仲間の殆どは海に生息している。エビやカニと同じ甲殻類だからといって決して味見をしないようにしてください。毒はありませんが美味しくはありません。
江戸時代からいるワラジ虫が進化変形したわけではなく、明治時代に海外から持ち込まれ、帰化したらしい。しかし、本日のテーマはダンゴ虫がどんな生き物か、足が何本か、どこから来たかなどが問題ではないのです。ワラジ虫との違いも丸くなるのとならないので良いのです。皆さんのようにインストラクターを目指している人は熱意を持って受講するでしょう。でも相手が保育園児だったら?幼稚園児だったら?興味の無い話をおとなしく聞くでしょうか?そこで登場するのが、一年中簡単に見つけることができ、しかも子供たちに人気ナンバーワンの小さい生き物がダンゴ虫なのです。
そして先程の「簡単に見つけることができる」とは何故?習性を知っているからです。湿った場所、暗い場所が好きなのです。あらかじめ確保しておいても良いし皆で探すのも良いです。落ち葉、ノート、消しゴムでダンゴ虫の住み易い家を造ります。落ち葉を湿らせ、その上にノートを置き、消しゴムで隙間を作る。次に犬を飼っている子供はいますかと皆に尋ねます。近くにダンゴ虫を放します。そして犬を家に入れる時、何というか尋ねます。答えが出たら皆で「ハウス」と言います。ダンゴ虫は家に入り、しつけは完了。楽しんで興味を持った処で、ダンゴ虫はお腹に袋を持っていて子供を育て、枯葉やゴミを分解し掃除をする良い虫だから、大切にしてあげてねと伝え、皆でありがとうと言って庭に放します。
石の下や土の中にいる虫を尋ねます。ミミズやハサミ虫が出てきます。日本にいるハサミ虫はごく一部、子供と一緒に狩をする種もあるのですが、代表的な物は卵を産んだ後は水も飲まず、餌も取らず、卵が腐らないよう、カビが生えないよう、風を送り向きを変え、守ります。そして子供が一人前になると親は死に、自分が子供たちの最初の餌となります。命懸けで育てられたハサミ虫ですから殺したり、いじめたりしないで、そっとしておいてあげようねと言います。
(注:土の中の虫は大腸菌がどうのという保護者がいます。手洗いを勧めてください。免疫系の発達からみれば、無害な菌とは触れ合っていたほうが良いということは知っておいてください。)
実物の虫を使って講習するときは子供たちの目は輝き、保護者はだんだん距離を取り出します。しかし、子供たちの言葉をいちいち正す必要はありません。大人たちは、全て子供たちの感じた事に、感心したり共感したりしてあげてください。参加者のプロフィールを完全に把握していない時は「お父さん、お母さん」は使わないでください。「うちの人」「家族の人」です。生きている物を「ありがとう」と言って放してあげたことを最後にみんなで確認することで、命の大切さを感じてもらえたとしたら大成功です。
さあ、皆さんは今日からダンゴ虫の調教師です。成功を祈ります。